【夜明け前拾い読み-29】
旧態依然とした幕府の諸制度を次々と改革し、横須賀造船所建設など軍事・産業の興産にも手をつけた後、15代将軍慶喜が大政奉還への思いを述べた部分です。外国による侵略(植民地化)から日本を守るため朝廷を補完するしかないと考えたようです。以下本文より抜粋しました。()内は私の注釈です。
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この上は、ただ自身に反省して、己を責め、私を去り、従前の非政を改め、至忠至公の誠心をもって天下と共に朝廷を輔翼し奉るのほかはない。その事は神祖(家康)の神慮にも適うであろう。神祖は天下の安からんがために政権を執ったもので、天下の政権を私せられたのではない。自分もまた、天下の安からんがために徳川氏の政権を朝廷に還し奉るものであるから、取捨は異なるとも、朝廷に報ゆるの意はすなわち一つである。あるいは、政権返上の後は諸侯割拠の恐れがあろうとの説を出すものもあるが、今日すでに割拠の実があるではないか。幕府の威令は行なわれない。諸侯を召しても事を左右に託して来たらない。これは幕府に対してばかりでなく、朝命ですら同様の状態にある。この際、朝威を輔け、諸侯と共に王命を奉戴して、外国の防侮に力を尽くさなかったら、この日本のことはいかんともすることができないかもしれないと。
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#夜明け前
#島崎藤村

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