【夜明け前拾い読み-16】
朝廷と幕府の力関係が大きく変動する現象が次々に起こり、街道筋は逐一その状況を映し出しています。
14代将軍家茂の上洛も重大な現象の一つと言えます。
以下本文抜粋しました。
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二月十三日に将軍は江戸を出発した。時節柄、万事質素に、という触れ込みであったが、それでもその通行筋にあたる東海道では一時旅人の通行を禁止するほどの厳重な警戒ぶりで、三月四日にはすでに京都に到着し、三千あまりの兵に護られながら二条城にはいった。この京都訪問は、三代将軍家光の時代まで怠らなかったという入朝の儀式を復活したものであり、当時の常識とも言うべき大義名分の声に聴いて幕府方においてもいささか鑑みるところのあった証拠であり、王室に対する過去の非礼を陳謝する意味のものでもあって、同時に公武合体の意をいたし、一切の政務は従前どおり関東に委任するよしの御沙汰を拝するためであった。宮様御降嫁以来、帝と将軍とはすでに義理ある御兄弟の間柄である。もしこれが一層王室と将軍家とを結びつけるなかだちとなり、政令二途に出るような危機を防ぎ止め、動揺する諸藩の人心をしずめることに役立つなら、上洛に要する莫大な費用も惜しむところではないと言って、関東方がこの旅に多くの望みをかけて行ったというに不思議はない。
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